仕事柄、いろんな人とお会いすることが多いのですが
昨年、一番印象的だったのは元NHKアナウンサーの
武田真一さんとのお仕事でした。
NHKの要職にありながら、50代半ばにして昨年、早期退局。
「人生最高の親友であり、最大の理解者」という
同級生の奥様とともに個人事務所を立ち上げました。
妻と一緒に過ごせる働き方を望んだことが独立の決め手として大きかった、と。
サラリーマンとしての定年は迫り、旅はそろそろ終わる。
それは安らぎを感じる一方、寂しくもあった。
人は何歳からでもチャレンジできる。
そう考え会社を辞めた。
そこにはどこまでも続く真っさらな大海原が広がっていて、
嬉しくなりました、と目を輝かせて語ります。
撮影を終えると二人は大きなリュックを背負い、
肩にトートバッグを担ぎ、丁寧にお礼を告げて、
軽やかに街中に消えていきました。
その二人を見ていて、爽やかな風のようなものを感じたのを記憶しています。
大ベテランのはずなのに、どこか初々しいというか、
二人で寄り添って、未来を切り拓こうとする姿に、心が温かくなりました。
「歳をとると感受性が鈍る」とずっと言われてきました。
「若い頃のような表現はできなくなるよ」と。
でも今になってなんとなく思うのは、歳をとって感受性が変わるのではなく、
それなりに偉い立場になると細やかな部分に
配慮する必要もなくなるからなのかも、という気がしています。
それが感受性を鈍らせているように見えるのかもしれません。
ただいろんな人に会って思うのは、結局のところ、人による、
という気がしていて偉いのに驚くほど腰の低い方もいますし、
丁寧な言葉遣いで話される姿はとても素敵だ、
といろんな人を見て思うようになった自分自身に驚いています。
武田さんたちのように、どんな立場になっても優しく細やかに言葉を紡ぐことは、
とても大切なことで、カッコもいい、と感じた2023年でした。
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